空模様
さあさあと静かな雨が、重くたれこめた雨雲から落ちて小さな洞穴に響く。
もう幾日も太陽の見えない日が続いている。降った雨水が乾かないため、じめじめと空気も湿っている。
父譲りの金髪も湿気を吸って重く、彼の心模様も曇っていた。
彼の左には、彼と同じように元気いっぱいにふてくされている、小さな人達。右には洞穴の穴とにらめっこしている魔法使とドワーフ。人間二人は道と食料を探しに出かけていった。
今の彼らは先を急ぐ身。中つ国に降りかかるであろう災厄を思えば、一刻も早く指輪を捨てなければならない。
けれど連日の雨で進むべき道は閉ざされ、彼らはその場で待機せざるを得なくなった。自然気持ちはふさぎがちになり、光が見えない期間に反比例して、口数が減っていく。
ふっ、と頭上の影が濃くなった気がして空を見上げると、辺りは確実に闇に蝕まれていた。皆が形のわからない何かを恐れている。動物も、草木も、星々でさえ暗い影に怯えて隠れている。
ざわ、と近くの茂みが騒ぐ。誰か、いる。殺気はないようだが油断は出来ない。アラゴルン達が帰ってくるまで自分が仲間を守らなければ。
彼が弓に家をやると、その誰かは静かに笑った。
「レゴラス、私だ。ボロミアもいる」
アラゴルンは片手で矢を下ろすように指示し、小さく燃える火で濡れた服を乾かしはじめた。
「道は?。遠くに?」
アラゴルンはレゴラスのその問いに首を振って答えた。
「ダメだ。やはり雨が上がるまで待とう」
「…そう」
雨が上がるまで。
皆がそう言う。もう少し待とうと。
「レゴラス?」
彼は頭を振った。アラゴルンに非があるわけではない。彼は今一番良いと思う判断を下したのだ。レゴラスだってそれが間違っているとは思わない。
けれども。
永遠に続く夜は無いと知っている。
朝は必ず来ると知っている。
けれどそれはいつ?。
いつになればこの例えようのない不安から逃れられるのか。
「…寒い」
レゴラスは小さく呟いた。
早く、一刻も早く。輝かしい暖かな朝が来ればいいと思った。